袋セメントの特殊施工例の紹介です。

社員ブログ



例年より早めに梅雨が明けたとたん、いきなり夏になりましたが、皆さんの熱中症対策は万全でしょうか?
体調管理には、十二分にご注意下さい。

さて,前回の基礎(床)の施工例の回に「床の次は、壁でしょう」と予告しましたとおり今回は、壁のお話です。
壁といっても住宅の壁ではなく、どちらかというと「斜面(ガケ)」です。
毎年のことですが、梅雨時期の雨量が少ないと水不足が心配され、多いとがけ崩れなどの土砂災害が心配されます。
土砂災害といえば、その崩落防止・災害防止・復旧工事の一部に袋セメントが使われていますので紹介いたします。

街中でも山道でも 道沿いにこんな斜面(のり面)を目にしたことがあると思います。

これは崖崩れ防止の為に、道路災害防止工事であったり、のり面保護工事や、急傾斜地崩壊対策工事などを行ったのり面ですが、そのほとんどを袋セメントで固めています。
こんなのり面を見て、どうやって工事しているの?とか、内側はどうなっているの?とか気にした事などはありませんか?
そこで今回は、その施工の様子を袋セメントの施工例として、また、現場で働く作業員の皆さんの「こんなご苦労をして工事されているんだ。」という大変さを併せて紹介いたします。

①この現場は、宅地裏の斜面が崩壊(ブルーシートの部分)し、
「さて、どうしようか?このままほたっといたらまたくずれるっちゃ」という現場です。

②崩壊したままの状態で工事を行っても、再び崩壊する危険があるので、崩壊しにくい角度になるよう形を整え土砂を搬出しているところです。
崖にへばりついている特殊なショベルカーは、なかなか他では見られない形ですが、ワイヤーにぶら下がって作業しています。

③土砂出しと平行して、のり枠工事の骨組みの設置が、急ピッチで行われています。
現場でヘルメットと長袖は当然ですが、命綱も必需品です。

④のり枠の骨組みの完成です。この後検査があって、いよいよ吹き付けです。

中央左側下の拡大です。 
セメントを吹き付けると見えなくなりますが、これが、のり枠の骨組みです。
のり枠の中にパイプが見えますが、施工後水がのり枠の中にたまらない為の工夫です。

後は、骨組みに沿って特殊な機械を使ってセメントを吹き付けていきますが、順を追って紹介します。

⑤セメントの納品風景です。1袋1袋手降ろしで、丁寧な仕事です。

納品完了。後ろにあるのが、セメントを吹き付ける特殊な機械の一部です。
この機械で、セメントと骨材の砂と水の配合を行います。

⑥セメントモルタル吹き付けの様子です。ここでも、安全に仕事が出来るよう落下防止のロープを着けています。
前の写真の機械で配合されたセメントが、勢いよく噴出し、のり枠の骨組みに直接セメントモルタルを吹き付けていきます。
足場の悪いところで筒先を持っての仕事は、見ている以上に骨の折れる仕事だそうです。

⑦吹きつけ終了です。のり枠の中や回りの黒い部分は、緑化の為の草の種(厚層基材)を含んだ土を吹き付けています。
写真で見ると「あっ」という間ですが、セメントの吹き付けだけで、10日位かかっています。

右下部分の拡大のビフォーアフターが、下の写真です。

生コンの打設のように型枠の中に流し込んで形になるのは、非常に良く分かりますが、
「骨組みの回りにセメントを吹き付けて、何で流れずに形になるのだろう」といつも不思議に思います。
「熟練の技」と言えばそれまでですが、出来上がりの見た目が大切だそうです。
このような工程(苦労)を経て、安全なのり面に生まれ変わります。
①の状態から⑦の完成までに要した工事期間は、1ヶ月半くらいです。
ちなみに、この現場に出荷したセメントの袋数は、何袋ぐらいだと思いますか?

以上「法面法枠吹付け工事」の工程を紹介いたしましたが、
この他にも、斜面(ガケ)の角度や、強度によって、厚層基材種子吹付工法(セメントを使わず、種子のみ吹きつける工法)や、セメントを薄く吹き付ける工法、斜面の地中深くに隠れている岩盤に固定する「ロックボルト工法」などその方法はさまざまですが、いずれもセメントの「どんな形でも固まる」という特性を利用した工法です。

おまけ
自然な状態の斜面・崖をのり面とは言いません。人の手が加わって初めて「のり面」という呼称に変わります。
平たく言うと「人口斜面」のことで、切土や盛土によって作られた斜面ものり面(法面)と呼びます。

今回はここまで。
夏がやってまいりました。
セメントや生コンを扱う工事のほとんどが、野外の工事です。どうかご自愛下さい。

                                          セメント部  籾木 山田 

<< >>